Kunaio

Global Shake 明己の惑星

白い部屋でお茶をしたいんだ。

 

 

 

窓辺で光る飾り

 

 

 

 サンキャッチャーだよ。

 この家には虹が棲んでいる。

 

 

 

彼は空間に手で孤を描く

 

 

 

 虹は記号。

 花は生命。

 星は声。

 

 

 

 今、ボクが決めた。

 

 

 

 何か飲む。

 

 

 

 

 

小さな丸太のコースターに、白いカップが置かれる。

アールグレイの香りが立ち上っている。

 

 

森の中。

カレンダーの中の 森の噴水。

白いお皿に

アールグレイのクッキーが置かれている。

ガラスポットには

ハーブが入っていただろうか。

 

 

 

 

 

 え まだ言ってなかったっけ。

 ボクは◇◇。君は。

 

 

自己紹介らしいことはまだしていないのに、

してないことを覚えてないの。

 

 

 何。抜けていると思った?

 まあそうだけど。

 

 

 漢字は。

 

 

 へえ。ふうん。そうなんだ へえ。

 

 

彼は、初対面の人をじろじろ眺めるように、この名前をそうした。

 

 

 ボクは人の顔も名前も、すぐ忘れてしまうんでね。

 漢字を想像すれば覚えやすいから。

 

 

 え ボクに漢字はないけど。

 音で覚えてくれる。

 

 

自分は漢字で覚えると言ったのに、あっさりと返される。

 

 

 詩を読んであげようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はどこからか木箱を持ってきて、

その箱の中からかわいい形のキャンドルを一つ選び、

テーブルの上にあった小皿に置いた。

 

マッチを取り出して、ショートケーキの上にイチゴを飾るように、

キャンドルに火をちょこんとのせた。

 

 

 

 

彼は文庫本サイズの、白い本を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の生命の中でも

 少しくらいは誰かの中に

 生きてみたいと 思ったこともあったな。

 

 

 アハハ。

 きっとどちらでもないよ。

 いい人とか悪い人とか、そういうものではないんだ。

 

 

 君がボクをそのどちらかに振り分けたいのなら、

 いい人の方でいいんじゃない。

 そうした概念には大して違いはないんだよ。

 どちらでも構わないのさ。

 名前も姿も同じ。それは便宜上。すべてがマボロシ

 

 

 だって君にとってボクは結局、

 今目の前にいる『コレ』でしかないだろう。

 ボクは君の知っている中の なにでもない。

 君が勝手に決めるもの。

 

 

 

 

彼は何を語ってみせても得体が知れなく、

そして色とりどりのガラス片のように光り、

ときどき、この目を見えなくさせた。

 

 

 君の見ているすべてがマボロシ

 ああ。

 なんて楽しそうなんだろうね。

 

 

彼は一つの未知の惑星のようだった。 

 

 

 

 

からっぽの柱時計が動いている。

時に止まり 何かのタイミングで動き出す。

カチコチ カチコチ

規則的に

 

カチコチ カチ コチ カチコチ カチ

または不規則なリズムで

 

 

誰かの歩みのように。

 

 

 

 

 

カーテンが揺れるたびに

万華鏡が回るように

煌びやかな光が散っている。

 

 

 

いつも彼は愉しそうだ。

表情はそうでもないのに

声の音がそうだ。

 

 

 

彼はなにか

神聖な秘密

 

 

 

ここはどこなんだろう

カップのお茶を飲む

 

 

 

香りが鼻から抜ける

脳裏に何か過ぎる気配がする

 

 

 

 

 

カチコチ カチコチ